(2023.9.11 誤字脱字を修正しました)

「信者の人権を守る二世の会」(以下 '二世の会' )シンポジウムを受け、離教2世の一人としてメッセージを発出したいと思い立ちました。
二世の会メンバーへ向けた'応答'ではありますが、離教・現役を問わず全ての家庭連合(旧統一教会)2世への呼びかけでもあります。もちろん2世以外の当事者、そして私たちに関わる全ての方にも、ぜひ読んでほしい内容です。
とても長文になりました。頭に"▼"のついた折り畳み部分は読み飛ばしても伝わるよう構成したつもりです。
はじめに
二世の会の皆様
このような形で唐突にメッセージをお送りする無礼を、どうかお許しください。
そして何より、この状況下で実名・顔出しで声を上げている皆様に対し、当事者の一人として心から敬意を表します。
自己紹介
まず、私自身の思いや考えを綴りました。
▼私自身について
私は、教団の区分では「信仰2世」にあたる、現在40代の元信者です。
私がまだ小さい時に親が入信し、私自身も韓国語を習得したり主に日本国外での教団活動('摂理')を経験してきました。
現在は家庭連合の信仰を完全に放棄している、離教者・元信者です。
▼家庭連合(旧統一教会)に対するスタンス
私は、自身の教団内での体験や学んだことに基づき、家庭連合の法人解散を願う者です。
ですが現在のところ、どの宗教2世の当事者団体にも所属はしていません。
そして私には、自身の「被害」を訴える意図はありません。
むしろ教団の中で人生の成長期を過ごし、多くの事を学び、そして教団の中で様々な「恩恵」を受けてきたと自認している者です。
しかし、そのような「恩恵」は、過去の教団活動に伴って発生した多くの犠牲の上に、多くの人を土台として成り立っていたものでした。
私はこのことを深く恥じ、この教団に長く身を置いてしまったことを心から悔いています。
私は教団にとって、いわば「イスカリオテのユダ」(裏切者)のような存在です。
実名や顔出しが出来ないことについては、皆様に対してアンフェアな態度であることも承知しています。
しかし、このことでたとえ謗りを受けることがあっても、家庭連合(旧統一教会)に反対する元信者として実名・顔出しをするリスクは、私には負えません。
失礼は重々承知のうえ、このまま匿名にて思いを表明させていただきます。
▼発信の動機
シンポジウムを通し、現役2世の境遇・思い・考えを聞かせていただきました。
それに対し、離教2世としても、ある程度整った形で、何らかの応答が必要ではないかと、ずっと考えていました。
2022年7月8日に発生した安部元首相銃撃事件以降、離教・現役の立場を問わず 'トンセン'(弟妹)達が声を上げ、世間の矢面に立っている状況を傍らで見ていて、私はずっと「かたじけなさ」を感じていました。
あれから時が経つにつれ、残念ながら離教側と現役側の溝はますます深まり、どちらも傷ついている状態が続いています。
だからこそ、立場を超えた真摯な意見交換や対話が必要であり、それは決して不可能なものではないだろうと私は考えています。
私自身、これまでこの問題に関する活動は特に行ってきませんでしたし、比較的古株にあたる一個人の立場で出来ることは、ほとんどありません。
それでも昨今の情勢をみて、 僭越(出しゃばり)を承知で、今、感じている思いや考えくらいは表明しようと思い、このように長文を書き連ねている次第です。
'二世の会'シンポジウムを拝見して
これまでのシンポジウムを拝見した感想を綴りました。
▼現役2世の率直な気持ち
まず、これだけの短期間に、この規模のシンポジウムを3回も開催されていることは、率直に驚いています。もちろん、皆様と思いを等しくする信者や有識者の方々のお力添えあってのことと思いますが、それにしても運営の方のご苦労は、並々ならぬものであっただろうと感じております。
シンポジウムの内容としては、有識者のご発言以上に、現役2世達が何を感じ、どんなことを発言されるのかに、私は注目して拝見していました。
それぞれが親御さんや教団との関係もあり、慎重な表現にならざるを得ない部分もあったと思うが、それでも率直で真摯な思いを感じられる発言が、いくつもあったと思います。
▼教団の対応に関して
ただ、大変残念に思ったのは、第3回(2023.7.30)の中で起こった出来事について、家庭連合が教団公式HPに抗議文を掲載したことです。
教団が二世の会に取材した内容を掲載したものとは伺っていますが、あたかも教団が関与しているかのような印象を受けてしまい、皆様の発言も、教団の影響下にあるのではないかと感じてしまったのも事実です。 (もちろん、皆様の自主性の元に運営されているとは思いますが)
この点は、二世の会の皆様というより教団広報側に、もう少し会の皆様の立場を考えて対応してほしかったかなと個人的には思っている部分です。
2世当事者を取り巻く問題
同じ家庭連合(旧統一教会)2世内でも、世代によって教会で見てきた風景や経験した事は大きく異なります。比較的古株にあたる私も、現役の方のSNS投稿などを拝見する限り、昔とは変わった部分も随分あるんだろうだなあと感じています。
当然ながら、教会がよくなっていくこと自体には何の問題もありません。
しかし教団が発展する過程で「貴い犠牲」が数多く生み出され、そのことで傷ついた離教者・2世が多数いることも、また事実です。
そういった、あらゆる面で犠牲になってきた信者に対して、教団はどんな取り組みを行ってきたのでしょうか。また、それによってどんな結果があったのでしょうか。
▼2世内の世代間ギャップ
第3回(2023.7.30)の中で代表の方が分析された通り、家庭連合(旧統一教会)の当事者2世内でも、世代によって教会との関係性にはギャップがあります(もちろん一人ひとりの状況により個人差があります) 。
離教側に多い30代以上の2世が経験した'統一教会'は、一般社会との関係も決して良好とはいえず、アボジ(教祖・文鮮明氏)直々に下される激しい'摂理'(教団活動)の中、波乱に満ちた生活を余儀なくされる信者や2世が大多数でした。
一方、現在20代の2世は、コンプライアンス宣言(2009年)以降、教団の活動が少し緩くなってから成人を迎えた世代。
第2次安倍政権と足並みを揃えるように政治(特に自民党)との関係性を重視し、また多数の '友好団体' を通じて様々な社会活動を展開することで、日本社会の中に溶け込んできました。
二世の会をはじめ現役信者2世の皆様は、自身の教会に誇りを持ち、幸せで充実した信仰生活を送っておられる方も少なくないのかなと拝察しています。
▼教団の信者に対する態度
もちろんそれ自体が悪いことでも、非難されることでもありません。
問題は、教団が信者の払った犠牲に対し、どのような態度を取ってきたのか。
「為に生きる」「絶対服従」('家庭盟誓' 第8節)という方針のもと、教団は信者の個人と家庭に多大な犠牲を強いてきたのではなかったでしょうか。
現在の「清平」にある広大な「HJ天苑」をはじめ、全世界に展開される「摂理」の発展の陰に、教団創立以来約70年間に及ぶ、あまりにもおびただしい犠牲があるのではないでしょうか。
そして、犠牲を払ってきた信者や2世に対し、教団はどのような態度を取ってきたでしょうか。「離れた人の為に祈りましょう」と呼びかけたり「尋訪」(シンバン・家庭訪問)を行うことで、犠牲になった信者家庭や2世の窮状が、どれほど解決したのでしょうか。
▼世論が驚愕した「家庭連合2世」の実態
7.8事件を起こした犯人・山上徹也氏の母親は、家庭連合(旧統一教会)の現役信者です。
家庭連合(旧統一教会)において、山上徹也氏のような困窮にある信者の家庭とは、ごく稀なケースにあたるのでしょうか。7.8事件後に声を上げた(上げざるを得なかった)離教側2世達の状況も、果たしてマイノリティーなケースにあたるものなのでしょうか。
残念ながら、私には到底そうとは思えません。
少なくとも2009年まで、あれだけ大きな犠牲を伴う「摂理」(教団ムーブメント)が、何十年も継続して展開されてきたのですから、これくらい多大な犠牲が出たとしても、何の不思議もないでしょう。
7.8事件を受けて報じられた山上家という「家庭連合(旧統一教会)信者家庭」の実情は、当事者にとってはある意味「そういうもの」ですが、世間には非常に大きな驚き衝撃をもって受け止められました。
言い換えれば、あれだけ報道を過熱させるほどのセンセーショナルさが、家庭連合(旧統一教会)信者家庭の実態の中にあったのです。

'二世の会'第1回シンポジウム質疑応答の場において、代表の方が「宗教の役割として、傷ついた人を出してはいけない」という趣旨の発言をされましたが、私はこれに大変感動し、そのお考えに心底同意します。
しかし、現在の家庭連合の姿はどうでしょうか。 そこに真摯に向き合おうというような態度には、私には到底思えません。
最近リニューアルした家庭連合ホームページのトップに「幸せな未来へ/家庭連合は/変わり続けます」と表記されています。(教団公式HP)
過去に蓋をしたまま「幸せな未来へ」「変わり続け」ることが、至高の公益性が求められる宗教団体の取る態度なのでしょうか。
2世当事者の「被害」
もちろん、これを二世の会の皆様にぶつけるのは筋違いです。なぜなら過去の教団活動によって被害を受けているのは、離教2世だけでなく現役2世も全く同じなのですから。
皆様が「宗教迫害」「過熱報道」と感じられるほど非難され白眼視される原因は、私たち2世ががほとんど知らない、過去の教団の活動や実態にあると言わざるを得ません。
よく「離教2世達の背後で『左翼』『共産党』が手を引いている」等の言説も耳にしますが、それは二世の会の皆様が「教団の指示で動いている」と'邪推'されることと、逆の立場で全く同じであるとは考えられませんでしょうか。
立場が違うだけで、離教2世が声を上げることも、現役2世が声を上げることも、その気持ちや切実さにおいては、全く同じものがあるのではないでしょうか。
当事者2世同士で対話の機会を
だから、2世同士が離教・現役と分かれて対立するのは、本来はおかしいことです。
昨今議論になっている「霊感商法」「拉致監禁」の問題は、どちらも主に1世の親世代における事件であり、どちらも直接的には関係していない2世がほとんどのはずです。
これらの問題は別途考える必要がありますが、2世は2世として、共通の課題や問題について、当事者同士で話し合ってみることも、悪くない話ではないでしょうか。
先に述べたように、世代間ギャップや考え方に違いがあるのは当然です。
お互いにそれを認めたうえで、まず率直に、何を思い、感じ、辛いのかを語り合ってみることも、決して無駄にはならないでしょう。
教団に対して声を上げる
そして、当事者2世が声を上げる先は、世論でも保守層でもありません。
ほかならぬ教団、それも韓国本部、そして韓総裁です。
ここで、二世の会Youtubeチャンネルにアップされた対談映像(2023.7.12)の末尾にテロップで流れたメッセージを、全文で引用させていただきます。
私たちは日本を愛する精神を 家庭連合から学びました。 愛国者として誇りを持っています。 だからこそ 「反日」と言われることには 耐えられません。 間違っていた認識があれば 真摯に反省し これからの「行動」で 本物の愛国団体であることを 示して欲しいです。
こちらのメッセージは、どこに向けて発せられたものでしょうか。
他でもない、家庭連合の教団へ向けて放たれた「声」のように、私には感じられました。
もしそうであるのなら、「信者の人権を守る二世の会」として、こうした思いと具体的な対応を求める声を、教団に向けて正式に表明されても良いのではないでしょうか。
もちろん、現役の立場で教団や「お母様」(韓鶴子総裁)に対して物申すなど、信仰的に考えても決してあり得ない行動。「左翼的思考」等と断罪されてしまうかもしれません。しかし、そここそ有識者の先生方の知恵とお力を借りるべきところ。
会の目的である信者の人権を守るべく、思い切って大胆に取り組まれるのは、いかがでしょうか。
韓鶴子総裁が本当に2世を愛して下さるのなら、そうして発せられた2世の切実な訴えに、真摯に耳を傾けて下さるでしょう。
おわりに
たいへん長くなってしまいましたが、現役2世の方々が上げた声に接し、離教2世の一個人の応答として、思うところを綴りました。
今後、私が再び家庭連合の信仰を持つ可能性は'0%'です。でも、幼少期から身を置いていた家庭連合(統一教会)教団に対し、関心がなくなったわけではないのです。
むしろ7.8事件を機に、よりそこに向き合って行かざるを得なくなったと思っています。
一個人である私に出来ることは非常に限られているものの、私自身の考えと責任において、賛同できる内容であれば、協力させていただきたいと思っています。