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魂がなくなった日②

更新日:7 日前



魂がなくなった日

『あれ?もしかして…

天国があるという根拠がないのなら、消えてしまうの?死んだら?私が?』

死後も永遠に続く意識=魂を約束されて生きてきて、これからも、死んでからもずっと私は私として存在するはずですよね!そう教えられてきたし、神様も感じてきたし、天使も見たし、教義も守ってきたし、天国に行けるはずでしょ?

『霊界なくても、お願い、魂だけは、残しておいてほしい…神様、お願い!』

現在の科学では、私たちは私たちの『意識』がどのように生じるかは殆どよくわかっていません。ではどんな可能性があるかというと

  1. 脳は意識の受信機であり、脳が壊れても意識は生き続ける

  2. 脳の活動によって意識が生じ、脳が壊れれば意識は消滅する

という2つのシナリオが成り立ちます。



脳が先か意識が先か?リベットの実験

人間に自由意志はあるのか?というのを実験で確かめたのに有名なリベットの実験というのがあります。これは、どういう実験かというと、

  1. スクリーンに0.5秒ずつ変わる文字がでてる。

  2. 被験者が右ボタンと左ボタンを持っている

  3. 自分の意志でどちらか一つのボタンを押すという決断をする

  4. その時に画面上に出ている字を覚えておく(いつ意思決定したか確かめるため)

  5. このすべてを脳波(最新の論文では高性能なfMRI)でずっと初めから計測

これは、脳の活動を細かく観察ができるfMRIという機械で調べた場合、意思決定する(したと感じる)7~10秒前にすでに脳が意思決定しているという驚くべき結果なんですね。これが2008年に出て2011年に追試されて確認されています。



図2. A.脳の意思決定をしている部分(fMRIで脳の活動を検出:オレンジ色)B.意思決定をしたという意識が現れる前に、脳の活動により意志が決定されている(50%以上になると意思決定)。出典: Bode S, He AH, Soon CS, Trampel R, Turner R, Haynes J-D (2011) Tracking the Unconscious Generation of Free Decisions Using UItra-High Field fMRI. PLoS ONE 6(6): e21612.https://doi.org/10.1371/journal.pone.0021612



つまりどういうことかというと、脳の活動が先で意識が後、ということです。時差があるんです。脳が意識の受信機であるなら意識が先で脳が後になるはずですよね?脳が意識の受信機ではなくて製造機であるということです。

脳から独立した異次元に存在する永遠不滅な意識(=魂)が脳を動かしているのではなくて、この頭蓋骨の中の脳が動いて「えーだるいわ、うんとこしょ」って私の意識をこしらえているんですよ。だから、脳が先で意識が後なんです。

いやでもさ、今までずっと魂だと思っていたこの「脳みそが作った意識」はもしかしたら永遠に続くかも、、、ね?そうでしょ?脳みそが作った現象でもいいんだ、どうにかして永遠に続いてほしい、死んで消えたくない!と思いましたよ。



脳の部位と機能

でも、生物学者リチャードドーキンスは無慈悲に言うんです。

  • 脳の部分ごとに役割が違う

  • 例えばウェルニッケ野(上図1の青の部分)に脳障害が起これば、しゃべれるしきこえるのに言語の理解ができなくなる

  • 紡錘状回顔領域 (FFA)に脳障害が起これば、ものを認識できるのに人の顔を認識できなくなる

  • 両方ともに障害が起これば言語も人の顔も認識理解できなくなる

  • では…すべての部位が活動を停止したら?

脳のある部位が活動を停止したら、それに対応する意識の機能が失われる。複数の部位が損傷すればそれに対応する意識の複数の機能が失われる。すべての脳の部位が活動を停止したら、意識のすべての機能を失って…そして私の意識は…

消えてしまうんですか…

そうなんですか…



神様の向こうへー世界が壊れた後で


少なくとも、死後も継続する意識があるという根拠は無く、天国も実在しないと考えるのが真摯で謙虚な姿勢だと気づいた後、私の持っていた世界観は足元から崩れて、そこから数か月は自由落下をし続けているような心境でした。

『世の中の人々は生きて死ぬだけなのにどうやって平気に生きていけるのか?』

『死んで消えていくだけの人生に何の意味があるのか?』

そんな問いを続け苦しみのたうち回りました。

信じられないことに、それでもなお神様と教祖様に対しては疑いを持てずにいました。魂も霊界も消えたというのに、神様と教祖様に疑いを持とうとすると、心がブレーキをかけるのです。皮肉ですね。それほど幼少期から刷り込まれた教義や世界観は懐疑的な思考から守られているんです。

『神様、〇〇様、今まで導いてくださってありがとうございました』

と祈って教祖様の御写真を捨てられたのは、それから二年後でした。全身が震えるのをこらえながらお別れできました。



倫理と人生の目的

そこから、神のいない世界にどのように倫理観を再構築して、人生の目的を立てていくのかを探す、壮大な旅が始まりました。

神が消え、メシアが消え、霊界が消え、魂が消え、最後に残ったものは人間でした。人間の可能性を信じ、人権を尊重し、『あなたも私と同じ価値がある人間』として支えあえる、そこに神のない倫理は成立するのではないかとたどり着いたのですが…

まあ、長くなりますのでその話しはまたの機会に。



TEA


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