はじめに
この記事は、私個人の体験であり特定の宗教を誹謗中傷するものではありません。
宗教的世界観が壊れて苦しんでいる宗教二世に、ほかにも同じ道を歩んだ人がいるというのが分かれば少しは気が楽になるのではないか、また
宗教が嫌いな二世でも、もしかしたら地獄へ落ちて永遠に苦しむのではないかと恐怖心を持っている方々に少しでも力になれたら、、、と思い執筆しました。
死との出会い
埃っぽい真っ暗な部屋の中、顕微鏡を何時間ものぞき込んでいた私の眼はもう限界でした。眉間をつまんで、一休みすると知らず知らずのうちに私は彼女のために祈っていました。
『天国で元気にしていますか?』
同僚のZさんは、深い緑の瞳のギリシャ人女性、いつもジョークぶっ飛ばす明るい性格。彼女は「ちょっと腰(意味深)が痛くて実家で療養するわ~」とか言って休職してたんですがね、実はもうその時癌が骨髄に転移しててあっという間に亡くなりました。
人生初の身近な人の死。この間まで笑いあっていた人が今は居ないという事実。
『貴方は神様に会えましたか?』
私はその時初めて真剣に死に向き合わざるえなかったんですよ。人間には魂があり死後には霊界に行く、そのように幼いころから教えられてきたし、その世界観の中で生きました。なのでもちろん彼女の魂が天国で安らかに過ごしていると思っていましたよ。
その世界観は教義として教えられて、宗教的な活動や習慣を通して『神体験』、『天使を見る』、『祈祷によって導かれる』等の経験によって裏打ちされた私にとっての『絶対的な真実』でした。でも…
『天国はどうですか?Zさん』
そう祈っている時にふと、むちゃくちゃ突然に、
『あれ?天国っていうけど、それにエビデンス(証拠)あるの?』
と、一つの疑問が湧いて出たんですよ。
なぜ今頃(中年ですどうも)になって疑問が出るのか?それまでは天国があるのは『揺ぎ無い絶対的な事実』であり、どうやったらもっと天国を理解できるのか、という観点から人生を追究してきたんですよ。これは子供のころに刷り込まれた世界観には「天国なんてあるのか?」という疑問を持って客観的懐疑的にアプローチできないからなんですね。
そして、その『死後も続く意識=魂』と『その意識が暮らす世界=霊界』が無くなると世界観が根本的に破壊されるので、心の自己防衛本能みたいなやつが『疑問』にブレーキをかけて世界観を守るんです。疑問をもつと私が私ではなくなり、世界が世界ではなくなるんです。
で、も、ね、持ってしまったんですよ、この『疑問』を。
『え、ちょっとまって、え、え、え、、、天国があるっていう根拠あるよね?ね?Zさん!』
祈っている私の体の中に、虚無の穴が開いたような不安が襲ってきました。
天国を求めて
天国(霊界)が実在するならどんな根拠が出てくるか?と挙げてみますと、、、
【前提】すべての人が死んでも続く意識がある=霊
限定的に霊と交信できる人はいる=霊媒師
肉体が死にそうになると霊界が見える=臨死体験
一番のもんだいは霊界の性質上により直接的に証明できないということです。死んだら戻ってこれない、それが霊界。それでも、間接的な根拠がたくさん示されればある程度信頼性があるということになります。状況証拠でもたくさんあれば霊界はあると証明されるはずですよね?
霊媒師とコールドリーディング
疑問を持ち不安になった私がまず最初に調べたのが霊媒師です。もしすべての生きている人に魂があり、今まで生きてきた人すべてが霊界にいるのなら、第三者が検証可能な証拠のある霊媒の記録がむっちゃたくさんあるのが自然です。
いろいろ調べてみると多くの公開テレビ霊媒番組の記録が出てきて、『ほら大丈夫、ちゃんと霊界があるじゃない、霊媒師すげー!』とほっと安心したんですよ。
で、その霊媒番組に混じってJames Randiの講義を見る機会がありました。その中で出てきたのがコールドリーディング技術。大まかに説明しますと…
①霊媒師が初めにリーディングされる人たちの精神的協力を得る
②高確率で当たる曖昧で一般的な内容の質問をする(バーナム効果)
a.例えば、胸を押さえた苦しそうな年老いた女性が貴方の隣に見えます、心当たりはありますか?
b.統計的にほとんどの人は家族や親せきにだれか高齢で心臓病で亡くなった女性がいる。
c.胸を押さえたという曖昧な表現で心臓病だけでなく、肺や心の病とかにでも解釈できる
d.外れたらすぐ疑問を持たれる前に別の質問をする(ショットガンテクニックと呼ばれる)
③回答と顔色やボディーランゲージから情報を読み取る
④その得られた情報からさらに曖昧な質問をして、出てきた詳細な情報をあたかも知っていたように話をする
⑤そうすると霊媒師はすべて知っているのではないかと確証バイアスが働く
例えば「写真が見えます」という霊媒師の言葉を「押し入れに大切にしまっているおばあちゃんの結婚式の写真」が見えたと勘違いしてしまうとか
a. 外れたものは忘れちゃう
このコールドリーディングがどのように働くかを理解してもう一度公開テレビ霊媒の記録とか見てみると、あーら不思議!霊媒師さんたちは曖昧な質問をして情報を引き出し、外れたらサクッと話題を変えて、出てきた情報をあたかも当てたように振舞ってみんな承認バイアスで引っかかっているじゃないですか!
でも、中にはちゃんと具体的に第三者が検証可能な霊だけが知っていることを言い当てたりする霊媒師はいるだろうと探したわけですよ。たとえば、隠し金庫の場所とか暗証番号とかを霊媒を通して見つけたり、殺人事件の被害者に犯人を教えてもらったりとかね。
調べて出てくるのは、有名な霊媒師たちのホットリーディング(事前にどのような人が死んだかどういう人物だったかとか下調べして霊媒をする、またはサクラを使う)疑惑や暴露本などが多々あり、あ~霊媒は根拠としては非常に気を付けないといけないなと分かったわけです。
少なくとも、霊との交流しているとされる殆どの根拠は、霊を信じるに足りるような根拠ではないという結論に達しました。これがすんごいショックだったんですよ。これだけ多くの人が信じ長い間霊媒をやったりしているのに、ちゃんと根拠になるような記録が無いのは不自然すぎるんです。
臨死体験と霊界
もう一つ、霊界が実在するという根拠になるのが臨死体験です。これならどうにかなるだろうと藁をもつかむ気持ちで調べたわけですよ。臨死体験というのは、心臓が停止して脳に血流が行かない時に10~20%の人々が体験するといわれるもの。
まずは、証言者の内容に共通する点は
幽体離脱を体験(天井から肉体を見下ろす)
故人に会う(親族や友人など)
霊界を見る
多くの臨死体験者が共通している要素は霊界はどういうところなのか、実在するのかに対する根拠になりえると思います。
ただ、詳細を見るとキリスト教の人はイエスに会ったり天使に導かれたりします。仏教の人は三途の川が見えたり仏に会ったりします。これは二通りの解釈ができるでしょう。
宗教によって行く霊界が違う
人間の意識が作り出している幻覚
1は同じ宗教の人たちでも証言に多くの食い違い(天使やイエスの姿、天国の様子など)があるので、それだけでは説明できないところがあります。個人のもつ宗教観が何を見るかに強く影響をもっているということは、2の方が有力。
では臨死体験にともなう幽体離脱はどうなのか?というとこれも逸話以上の根拠が出てこないんですね。幽体離脱している時に実際に部屋の中を見ているのかというのを客観的に検証するために治療室のロッカーの上に数字を書いた紙を貼っておいて、本当に天井から見えていたならその番号を読めるはずというAWARE Studyと名付けられた統計をとる試みもありました。その結果は誰も数字は読めなかったんですよ。まあ実際に記録できた幽体離脱体験の回数が101人という少なさなのもあり、客観的に検証することはできませんでした。
これは急に血圧が下がると角回(right angular gyrus 図のオレンジの部分)という脳の部位が正常に働かなくなり幽体離脱、つまり体外に出て天井から見下ろし部屋の中を観察しているような幻覚体験するというのが科学的に検証されています。なので角回を電気刺激すると普通の状態でも幽体離脱を体験するんですね。私もここをビリっとやれば幽体離脱を体験できちゃうわけです。
図1. 角回の位置 (オレンジ色:角回、青色:ブローカー野、緑色:ウェルニッケ野) James.mcd.nz - self-made - reproduction of combined images Surfacegyri.JPG by Reid Offringa and Ventral-dorsal streams.svg by Selket ライセンス CC BY-SA 4.0
ということは臨死状態の心停止した場合、当然血圧が下がって角回(このオレンジ色の部分)が異常をきたし幽体離脱をしたと感じてしまうと、、、、
つまり『魂が肉体から抜ける』ではなくて『脳が正常に働かなくり見える幻覚』というほうがもっと現実的な説明になります。
そして一番のポイント、それは『臨死体験した人は死んでない!』って所なんですね。これはそうなんですよ、死んでないんです。脳の活動が止まったとしても、証言をできた人はみんな血流が戻り脳が再び活動し始めた人なんですよね。
死んじゃった人は霊界に行っているかもしれないけど、臨死体験した人は生きている人なんですよ。少なくとも臨死体験は脳が酸欠状態、もしくは麻酔薬の影響下でおこる幻覚だととるのが謙虚で真摯な結論だと思います。
続きは「魂がなくなった日②」の記事で。
TEA
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