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統一教会の一日 その2

更新日:2020年5月13日





アクセルをひねる。こうしている時が一番気楽かもしれない。


運転に気を配りながらも、頭のなかに流れては去っていくイメージに身を任せればそれでいい。ふいにどこかから定食屋のにおいがして腹がへる。秋風が心地良い。


運転してしばらくたつと背伸びがしたくなった。ちょうど牛丼屋を通りすぎたので、あと五分ほどで教会につく計算になる。ここでいったん、路肩に停車してスマホを取り出し、時間を確認する。


「少しはやいな。」めずらしくあまり信号にかからなかったのだ。

このまま教会についたとしても、ゆっくり出来るわけでもなく、礼拝前の、パイプ椅子並べを手伝わされるのがオチだろう。


しかし、それならまだいい方で、もっと最悪なのは、先について準備をしている青年部長に話しかけられ、会話に付き合わされるパターンである。しかもその会話というのが、ほとんどインタビューに近い質問の嵐か、あるいは興味のない話を、エンドレスで話されるかのどちらかで、それはコミュニケーションとは程遠い、どちらかと言えば拷問にちかいものなのである。それだけは避けたい。ここは教会付近のコンビニで、時間を潰すとするか。



コンビニの10メートル手前で、クラッチを握り、エンジンを切ってゆるい下り坂を惰性でそのまま進んでいく。今のおいらと同じだ。惰性で親に信仰のあるふりを続けている。



バイクを停めると、左足で素早くスタンドをたて、ヘルメットをとる。

背伸びをして、利き手で髪の毛をワシャワシャする。やっと一息。


のみきれるサイズのミルクティーを購って外にでる。ストローから摂取した糖分で、脳みそがほぐれていくのがわかる。


「はぁ」おもわずため息がでる。「ぷぅ」ついでに屁もでた。


半分ほど飲み干した頃合い、道路を挟んだ向こうの歩道に、ヒョンが歩いているのが見えた。礼拝に向かう途中だろう。ちなみに「ヒョン」というのは、韓国語で兄をさす男言葉であり、韓国発祥の統一教会では、年上の男性を呼ぶさいにつかったりする。ヒョンはスマホでゲームをしている様子だった。顔面と画面の距離が異常に近い。



空のカップをゴミ箱にほおりこみ、バイクに乗ると、すぐに教会についた。階段下のスペースに駐車して、扉を開ける。


なんだか今日はとくに気が進まない。エレベーターにのったら五階のボタンを押す。相変わらずゆっくりとしたエレベーターだ。いっそのことこのまま着かなくてもいいのに。


五階に到着すると、無駄にテンションの高い受付係と挨拶をかわし、名簿に汚い字で名前を書いて、礼拝堂に足を入れる。



とうとう着いてしまった。




炭酸水



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この記事は誰かのための道しるべでもなく、誰かへのSOSでもなく、ただその時感じたことを記録として残しておくためだけのものである。 ※自身のnoteに書いた記事のセルフ転載です。 2025年現在の関係 著者子供時代と母 実家を出てから 銃撃事件後の1年間 現在の想い...

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