私を救ってくれたのはエホバでも親でもなく「世の人」だった話 後編

付き合い始めて半年ほど経った頃、私のスマホを勝手に見た母が交際に気づき、私は"終わった"と思った。

エホバの証人には、信者でない人との交際や結婚はNG、また男女交際は霊的に円熟してからするように(つまり若いうちは男女交際するべきではない)という教えがあり、この付き合いがバレたら反対どころか母の性格上あらゆる手を使って別れさせられるからだ。

予想通り母は怒り狂い、娘が「不道徳」を犯していると長老(※1)に話し、母同席のもと長老との話し合いの場が設けられた。話し合いでは彼と私がどんな「不道徳」を犯したのかが事細かに聞かれ、「世の人」(※2)との交際がいかに悲惨な結果を招くかということが長老から説かれた。

彼との甘酸っぱい青春を彼の人間性も何も知らない長老たちに汚された気がして、屈辱的だった。


そして私と彼の交際を続けさせないため、母はあらゆることをした。

一時は高校を辞めさせるとも言ったが、私がそれを聞いて自傷行為をしたこと、現実的に考えて高校を出ていないと困ることは容易に想像がつき、我に返ったためそれは思いとどまった。

しかし、登下校で会わないよう(彼は他校生だった)毎日車で送迎し、私のLINEから彼をブロック、削除し、スマホのGPSアプリで私がどこにいるか常に見張り、定期的に私の部屋を漁った。

突然私が消えたことをきっと彼は心配しているだろう。それとももう愛想をつかして嫌われてしまっただろうか。



私は信頼している学校の友達に頼んで、親に交際がバレたこと、連絡はできないが嫌いになったわけではないことを彼にメールしてもらった。彼は「ずっと待ってるよ」と答えた。

それから高校を卒業するまでの1年半、数ヶ月に一度親が仕事で家をずっとあける日に30分だけ会って話すという交際を続けた。束の間だったが、たくさんのことを話し、笑い、泣き、ときにはすれ違いながらも、本音が言える自分の居場所ができて安心感を覚えた。


彼女の親の宗教のせいでこんなに制約があるなんて不安なはずなのに、それでも私を受け入れてくれる彼の存在は、幼い頃から親に叩かれ、否定され、本当の気持ちを言うことができなかった私にとって救いだった。家にいると息ができなくなったり吐き気がしたりとこの頃は常にストレスで体調が悪かったが、彼といると落ち着いた。


あれから約7年が経ち、私たちは23歳になった。時間はかかったが、彼に背中を押してもらい、私はエホバの証人を完全にやめることができた。今も交際は続いている。まだ16歳だったあの頃、私を待っていてくれた彼には本当に感謝している。

また、完全に許すことは出来ないが、母はあの頃私にしたことを後悔し「あなたが幸せになってくれるならそれでいい」というようになった。

しかしこれから将来のことを考え、結婚しようとなったときには、親の宗教のことでまた新たな問題が生まれるだろう。

でも、私は絶対に負けない。自分と自分の大切な人の幸せをつかむために。



この文章を書いたのは、恋をしよう!ということではなくて、あなたの気持ちを理解して、受け入れて、支えてくれる人は、同性でも異性でもきっといるよ、ということを伝えたかったからです。

ずっと辛い思いをしてきた宗教2世の若い人たちが安心して気持ちを言える人が、友達でも、恋人でも、ネットでつながった人でもいいから、どこかで見つかって、自分の人生のための一歩を踏み出すことができるといいな。


※1長老:会衆のトップ。男性しかなることができない。

※2世の人:信者でない人

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